6/21 四股1000 五十五日目 夏至股夜四股

 夏至と新月の本日は特別稽古「夏至股夜四股」。暗闇での四股踏みはどんな感覚なのだろうということから発して、新月なので夜は真っ暗になるだろうし、合わせて一年で一番日が長い日の夕暮れの、全国各地の時差を共有しながら楽しもうと企画した。19:00から20:00の間に、オンライン中継の風景はそれぞれの美しさで次第に変化していった。

 この四股1000は、コロナ禍の影響のステイホーム期間中に始まったため、一人ひとりがオンラインで繋ぎ、基本的に自宅で実施しているが、19日に都道府県をまたぐ移動が解禁になったこともあり、近隣の参加者同士が野外に集合して、稽古開始から五十五日目にして初のオフライングループ中継組もいた。

 18名参加(過去最高)。東京、神奈川、京都、大阪、福岡、沖縄より参加。野外からは、隅田川(東京)、鴻応山をバックに豊能町の畑(大阪)、京都のマンションの屋上、糸島海岸(福岡)、トロピカルビーチ(沖縄)。本日のカウントは、日本語の数字、元素、四股踏みドリーマー甚句、川の流れのように、鉄道の旅、地歌「黒髪」、ポーランド語の数字、インドネシア語の数字、全員+鍵盤ハーモニカ+相撲甚句「当地興行」のカウントで1000回。

 隅田川チームは8名参加。両国国技館からすぐそこのリバーサイドで、壁には相撲の浮世絵、柵には決まり手がデザインされ、相撲の臨場感溢れる環境。一挙に8人もの多人数がリアルに四股踏みできる喜びで大はしゃぎになり、飲めや歌えやの「飲めや」箇所はないものの、言い換えれば、四股踏みゃ歌えやの「四股の宴」たけなわ。川のさざなみ、時々通り過ぎる屋形船、対岸の都会の灯り、総武線の電車の音、四股歌と足踏みの音。春の隅田川では、「飲めや」も追加して各地の四股踏み中継を楽しむ「お四股見」を計画したい。隅田川に来るとなぜかそういう気分になってしまうのかもしれない。

 豊能町の畑チームは4名参加。ダンサーの佐久間さんは『柔らかな土が気持ちよかった。裸足でしたんですが、足の方がすこしづつ深く、なめらかになっていき、四股型のようになっていきました。踏みしめても全然痛みもなく、スネの骨が立ち感じもつかみやすかったです。』とのこと。裸足で土を踏みしめるというのは、四股の原点のような気がする。彼らがポーランド語とインドネシア語で700〜900歩をカウントする間、鴻応山の空が桃色から紫、漆黒と次第に夜になり真っ暗になった。隅田川では体験出来なかった闇四股はどんなだっただろう。

 糸島海岸の大澤さんは、砂浜で裸足の四股。『ずっと踏みしめると最初は柔らかかった砂が固くなっていくのが面白かった』、『海の波を感じながら四股を踏むのは、とってもいい。ダイレクトに体の中の水が、海の波とつながる感じがします。海の波が寄せたり引いたりする大きなリズム(文字通り「律動」というか)と同期した、ゆーっくりした四股を踏んでみたくなりました。体の中の水が、海の波と同期して波を打って、その体の内側の波によって、体が動かされるような四股を踏んでみたい!と強烈に思いました。』、ちょうど潮が満ちてくる時間帯だったので、『波がちょっとずつ足元に近づいてきて、じわじわと、満ち満ちした感じが、沁み沁みと体に沁みこんできてました。引き潮を見ながら四股を踏むのと、満ち潮を見ながら四股を踏むのは、ちょっと感覚が違うんじゃないかと思う。』とのこと。

 波のリズムや潮の干満と同期した四股体験は魅力的だ。干満は、四股を踏み込む時(満ち潮)、足あげる時(引き潮)の、地球の大きな四股リズムともいえる。踏みしめていって滑らかになったり固くなったりしていく土や砂が、潮水、塩と水と繋がっていく。それはまさしく土俵、土俵作りなのだと気づく。山の土俵と海の土俵。四股1000は地球の土俵作りなのだ。そういえば、呼出しさん達は土俵作りで、フカフカの土をまず固める時は、年中何千回何万回も四股を踏むようにして、小さい足踏みを何遍もしてならしていく。そうして心地よくなった地面が土俵になっていったのかと思うと、四股だけで土俵作りをして相撲をとってみたくなる。JACSHA鶴見が二週間前に作った「四股踏みドリーマー甚句」は、歌に読み込まれた夢が、今日という良き日にいくつか叶ったらしいので、これらのやりたいことをどんどん甚句に込めて歌ってもらいたい。

各地の様子写真
6/21 四股1000 夏至股夜四股 開始時の各地の様子

 

糸島海岸と豊能町の1時間の変化

糸島豊能町1糸島豊能町2糸島豊能町3糸島豊能町4糸島豊能町6

6/20 四股1000 五十四日目 アリ

 9名参加。東京、茨城、京都、福岡より参加。ルルベ、ドゥミプリエ、壁の股割り、腰割りから開始。本日のカウントは、JACSHA野村が読む相撲聞芸術フォーラム「相撲道と作曲道1」より、岩槻の子ども古式土俵入りの動きと相撲の技との共通点/テッポウの肩甲骨の回し方について、「中動態の世界」(國分功一郎著)、琉球古典音楽「述懐節」、宮城道雄三味線練習曲22番(二上り)、日本語の数字、「アリになった数学者」(森田真生著)、全員のカウントで1000回。参加者が10人未満のときは、ラスト100歩は全員一斉にそれぞれの仕方でカウントすることが多く、カオスだったりポリフォニーだったりヘテロフォニーだったりと毎回凄い音響になる。最近のテンポチェンジ四股稽古により、ラスト100歩のテンポもそれぞれになり、1000歩目がだいぶズレて終わるようになったのも面白い。今日の合奏カウントラスト100歩も印象深かった。それまでの900歩中にいろんな物語があり、ハードなテンポチェンジ四股を経たあとに、箏奏者の竹澤さんがメゾピアノで歌う「ゴンドラの唄」が、合奏カウントのカオスにうっすら浮かび上がる。一挙に力が抜け、まるで映画のエンドロールの中にいるような恍惚の四股だった。JACSHA樅山は、四股を踏みながら中動態に思いを馳せ、その後「アリになった数学者」の朗読を聞くことで、本当に自分の胸部から6本の脚が生えていて、それらを自由に動かせるような気がしたという。アリの視点で世界を見てから、ドラマチックなテンポチェンジを経て、自分の6本の脚を肩甲骨から回すイメージで四股を踏んでいたら、ゴンドラの唄が聴こえて来たので、自分は死んだのだろうかと感じたそうだ。四股を踏むことで誕生から死までを体験してしまった。これを名付けるならば「世の終わりのための四股奏曲」(作曲:メ四股アン)となるだろうか。

 JACSHA野村が音読した、一ノ矢さんのテッポウの教えに応じて、四股を踏みながら人テッポウ、猫テッポウ、蟻テッポウと、肩甲骨と腕の動きも充実した。テッポウは一ノ矢さんによると『引く動きが大切だが、引きすぎると筋肉を使ってしまうので、引きすぎず、物足りないくらいが良い』とのことで、肩甲骨を大きく回すのではなく、前の方でやるイメージだ。この回転運動はいろいろなシーンに展開されていることが判明した。打楽器演奏時の重力にしたがう動きと引いて抜くときの連続した円運動、卵の泡立て、おじいちゃんが演奏するお祭りの囃子太鼓の、包容力のある柔らかいリズム(踊りたくなる)、シュッシュッと弦を摺るお箏の奏法「散し爪」は直線でなく回すように演奏する。前方回転運動に成功すると、これらが無理なく疲れずに一定のテンポでいくらでも繰り返し連続できるという。

 JACSHA鶴見は、琉球古典音楽の難曲「述懐節」でテンポチェンジカウントに挑戦した。一歩一歩の長さが変化し、リテヌートも頻繁にありフェルマータもあるので、合わせて四股を踏むのは至難であるが、何度もやったら曲に慣れて踏めるようになるだろう。こうして、いろいろな楽器や音楽について四股やテッポウを通して学べてしまうのは嬉しい。日本の伝統的なテンポチェンジの音楽構成といえば「序破急」がある。知っているようでよく知らないので、学びたいと提案があった。いつしか四股1000で「序破急」も踏める日が来るかも知れない。

四股ノオト
6/20 四股ノオト

 

6/19 四股1000 五十三日目 餅の気持ち

 11名参加。東京、茨城、京都、大阪より参加。ルルベ、ドゥミプリエ、壁の股割り、腰割りから開始。腰割りは、JACSHA野村が読む相撲聞芸術フォーラム「相撲道と作曲道1」より、一ノ矢さんの教えを聞きながら丁寧に実施。本日のカウントは、「虚像のアラベスク」(深水黎一郎著)、松井茂短歌作品集(ひー、ふー、みー)、元素(軽い方から)、さいたまトリエンナーレ2016千秋楽での一ノ矢さんとJACSHAの相撲聞芸術フォーラム「相撲道と作曲道1」より、腰割りと四股、「中動態の世界」(國分功一郎著)、琉球舞踊曲(揚口説、かぎやで風節、唐船どーい)、全員のカウントで1000回。

 昨日に引き続き、テンポチェンジ四股稽古を試みる。裏拍の取り方(足を上げるタイミング)はたびたび議論になるが、速踏みになると一層意識される。オーケストラの指揮者によって裏拍の振り方が違うように、四股でもさまざまだ。打楽器奏者の神田さんは速踏みをうまく踏むコツとして「ニヨォッ」と表現した。ニで装飾音が爪先でオンビート、ヨォッで踏み込むイメージ。JACSHA鶴見は、テンポチェンジ四股は催眠術にかかるようだという。確かに石神さんの元素カウントで、軽い方から重い方にかけてのジワジワとしたリタルダンド、神田さんの重い口調による遅いテンポ、四戸さんの高い口調による速い四股からのモデラートなど、イメージや声からの影響でも自ずと四股のスタイルが変化する。鶴見は、三線を演奏しながらのテンポチェンジカウントに挑戦したが、「唐船どーい」などの早弾き曲を立奏するのは苦手なので、ほとんど座った時の姿勢に近くなるまで深く腰を降ろし、足をほとんどあげない四股ならば出来るという。速踏みは腰高になりがちだが、やってみると大変キツいけれど、これも体を整える四股として有意義であろう。

 ゆる体操をした後に今日の四股1000に臨んだダンサーの砂連尾さんは、臼の中に入っている餅の気持ちになったという。自分で餅をついて、さらにつかれて、グニッグニッと一人何役もこなしていると、いい腰や体が出来てくる。新しい情報が入りやすくするため、餅をつきなおし、孵化する体を作らなければいけない。いい餅をつくための四股なのだと言う。自分自身がついてつかれる餅であることをイメージしてみると、JACSHA里村が読んだ本の中動態(受動態でも能動態でもない状態)とリンクする。また、餅つきといえば、お相撲さんを想起する。明後日に計画している、新月で夏至の日の夕暮れ〜夜の四股会から半年後の冬至の日には、餅つき四股大会が提案される。相撲部屋での餅つき大会もちょうどこの時期だ。お相撲さんも餅の気持ちになるのだろうか?そうして餅に憑かれた稽古後には、参加者から餅を食べたという報告が続出した。

四股ノオト
6/19 四股ノオト

6/18 四股1000 五十二日目 テンポチェンジ

 10名参加。東京、茨城、京都、大阪より参加。ルルベ、ドゥミプリエ、壁の股割り、腰割りから開始。本日のカウントは、宮城道雄「新古今集」より「うぐいすの」、日本語の数字、「グラウンド・ツアー:泥モノ」(藤森照信著)より、泥の建築、さいたまトリエンナーレ2016千秋楽での一ノ矢さんとJACSHAの相撲聞芸術フォーラム「相撲道と作曲道1」より、ピアノの腰割り、相撲甚句(カエル)、元素(軽い方から)、「軸とハラを鍛えれば必ず強くなる!」(高岡英夫著)より、熱闘力系の心田流、松井茂短歌作品集(ひー、ふー、みー)、全員のカウントで1000回。

 昨日の四戸さんのお話『楽器演奏では、早弾きの練習も重要で、スロー練習だけだと手に入らないバランス感覚が整うことがある』をヒントに、カウント時の意識的なテンポチェンジを試みた。前の人のテンポに引き続き委ねても良いし、切り替えて早く/遅くする、担当の100カウントの中でテンポを変えるなどした。佐川流モデラートから50歩目以降ピウ・モッソ、アッチェレランドやリタルダンド、曲想に合わせての変化、テンポと共に朗読の声色も変化、アレグレットのままキープ、などが起こった。突然テンポが速くなると、一歩踏んだ後の裏拍で感じる揺り返しをどうしたらよいか迷ってしまって、あたふた。その後、いろいろなテンポチェンジに応じながら、速踏みの四股でも着地と揺り返しにだんだん慣れてくる。これで思い出すのは、バレエ公演に向けて、ずっと伴奏ピアノや音源に合わせて練習してきたバレエダンサー達が、本番前のリハーサルで、それまでは完璧に踊れていたのに、本番指揮者と初めて合わせるとき、テンポやタイミングの違いに体が付いていかず、小鹿のバンビちゃんのようにワナワナとした動きになってしまうことがある。今日の戸惑いはまさに小鹿のバンビちゃん状態になった。しかし、そんな焦りや戸惑いを超えて、1000歩踏んだ後の今日の汗の掻きかたは何か違う。

 『テンポを変えることは、根源的な喜びに繋がる』と評論家の松平あかねさんは言う。例えば、身振り付きでの、子ども達とのアイアイ、お年寄りとの幸せなら手をたたこうで、途中から高速にすると、突然はしゃぎ始め、テンションが上がって楽しくなる。オーケストラのファミリーコンサートでも同じ仕掛けで楽しむプログラムがある。テンポチェンジ四股稽古の、あたふたからの充足感は、まさに根源的な喜びであったのだ。いつもと違うことをしたときの新たな発見、そして原点にさえ戻ることができた。また、カウントをする人は指揮者になる。意識的なテンポチェンジとはどうすれば出来るのか。音楽家のメンバーは、日頃からの慣れで、変えようと思えば自ら変えられる体が出来上がってる感じがしたが、JACSHA世話人の里村は、電車の車窓から見える風景のリズム、ほふく前進などをイメージしたという。彼女の最近のカウントでは、大地を踏み鎮めるリズム、赤子をあやすリズム、鼓動のリズムと、四股に繋がるリズムの話を朗読してくれるが、いろいろな現象のリズムはどのようなのかとイメージを膨らまして同調し、四股を踏んでみるのはなんと素敵なことなのだろう。JACSHA鶴見は、相撲甚句や沖縄民謡などの歌でカウントをすることが多く、四股のテンポに合わせて選曲してきたが、これからは幅が広がるという。箏奏者の竹澤さんと澤村さんによる箏曲「六段」の、テンポチェンジを含んだ全段カウントも待ち遠しい。

 松平あかねさんが朗読した熱闘力系の心田流(しんでんりゅう)とは、ダンサーの砂連尾さんの、脇の下から蛇がニューンと出てくるイメージ(6/14 四股1000 四十八日目脇と蛇 参照)であることに衝撃だ。心田流の解説では脇から熱性のエネルギーを取り入れる身体意識と書かれているが、出たり入ったりの双方向のエネルギーであるのだろう。本のイラストも、脇から蛇のような長い二本線で図解されている。歌手の舞台衣装などで、脇や腕のあたりから何本もの紐や糸が垂れ下がっていたり、羽のようなデザインのものがあるが、あれは脇エネルギーの可視化なのかもしれない。相撲の化粧回しやサガリにも共通点があるような気がする。

 JACSHA野村が音読した「相撲道と作曲道1」は、3年半前のトークの書き起こしであるが、一ノ矢師匠は『四股は究極の人類の身体活性法』であるといい、JACSHA樅山は『音楽家にとっての四股は何なのかを考えていたが、四股そのものをするのがいいのではないか』と提案している。それを聞きながら今、四股を踏み始めて50日余り。三年先の稽古というが、三年後にこのレポートを読むのが楽しみだ。

四股ノオト
6/18 四股ノオト

6/17 四股1000 五十一日目 スルスル

 11名参加。東京、神奈川、茨城、京都、大阪、福岡より参加。ルルベ、ドゥミプリエ、壁の股割り、深い腰割りキープから開始。本日のカウントは、松井茂短歌作品集(いち、に、さん)、「軸とハラを鍛えれば必ず強くなる!」(高岡英夫著)より、朝青龍が強かった理由、「占星術の文化誌」(鏡リュウジ著)より、占星術と音楽、宮城道雄「新古今集」より「いはまとじし」、日本語の数字、さいたまトリエンナーレ2016千秋楽での一ノ矢さんとJACSHAの相撲聞芸術フォーラム「相撲道と作曲道1」より、双葉山は非力でも強かった理由、「グラウンド・ツアー:泥モノ」(藤森照信著)より、大地を踏み鎮めるリズム、「ワニのオーケストラ入門」(ドナルド・エリオット著)より、トライアングル、ティンパニ、竹野相撲甚句(鳴り物尽くし)のカウントで1000回。文化生態観察家の大澤さんは、珍しくシンプルに日本語の数字でカウント。数字だけのカウントもいい。一つずつ数えていくだけなのに、思わぬ所で間違ったりするのは誰もがあるある不思議体験。四股1000では、今ではカウントの方法にバラエティがあり、芸能の発生体験だったり、内容が深い学びになってしまうほどに進化しているのだが、始まった当初は単に数字を数えるだけだった。とにかく1000歩踏むことを達成するのが目的だったからだ。そのうち、念仏風、アニメ声などに色づき始め、何かのリスト、甚句、歌、朗読、動物など、踏むこと以外の楽しさが加わっていった。1100歩分を数えるので、数字なら10進法がメインだが、2進法など、数字だけでもいろいろありえる。今のオンラインからオフラインになった時にまた違うカウントスタイルが生まれるのは必至である。

 JACSHA野村が音読した「相撲道と作曲道1」の、双葉山の足はツルツル滑っているようでも腰は安定しているという話から、コントラバス奏者の四戸さんが、足をスルスル滑らせながら演奏するクラリネット奏者がいらっしゃることを教えてくれた。オーケストラなので椅子に座っての演奏である。お腹に重心があるので、足も演奏も自由自在になるとのことだ。四戸さんは演奏を教える時や自身の演奏時に、とにかく重心を下げて腹を意識して自在に演奏できることを重要視しているという。ピアノやドラム、オルガンなど、椅子に座ることが必須の楽器は多い。オーケストラや室内楽のほとんどの楽器が椅子で演奏するのに対し、個人レッスンでは立ちっぱなしでやる楽器も多い。おそらく最終的にはコンチェルトを目指すからであろう。四股トレは立った時の重心づくりにも役に立つが、椅子の座り方も変えてくれる。個人レッスンでも時には椅子もありだ。また四股のテンポへの提案もあった。楽器演奏では、早弾きの練習も重要で、スロー練習だけだと手に入らないバランス感覚が整うことがある。四股1000でも、意識的なテンポチェンジにトライしてもいいかもしれない。

四股ノオト
6/17 四股ノオト

6/16 四股1000 五十日目 土

 6名参加。東京、神奈川、茨城、京都より参加。腰割り前のトレーニング、ルルベ、ドゥミプリエ、壁の股割りから開始。本日のカウントは、さいたまトリエンナーレ2016千秋楽での一ノ矢さんとJACSHAの相撲聞芸術フォーラム「相撲道と作曲道」より、宇宙との対話、「グラウンド・ツアー:泥モノ」(藤森照信著)より、地母神信仰と四股、「占星術の文化誌」(鏡リュウジ著)、竹野相撲甚句(川尽くし)、行司の呼び上げと取り組み、「日本音楽のちから」(現代邦楽研究所編)より、作曲家達の邦楽作曲について、全員のカウントで1000回。今日は比較的アレグレットであったが、一日稽古休みを挟むといつもよりきつく感じる。人数は四股1000初期くらいで、あの頃は今日のようにアレグレットであった気がするし、休みの後は心身がリフレッシュされ、かつ少人数だと軽めのテンポになるのかもしれない。

 本日は、カウントに読み物が多かった。内容にもなんとなく繋がりを感じる。宇宙や星空や大地、といった壮大なものをそれぞれ違った視点で取り上げているテキスト。
 JACSHA野村によるフォーラムの書き起こしからは、物理科学や理系に音楽が身近であったら、世界は変わっていたのでは、という一ノ矢さんのコメントが印象的。「原子力は宇宙との対話ですから」。四股でも毎日、参加する一人一人が自由に世界と対話して思いもよらない物語が生まれ出る。その想像力は、世界を変えていく予感に満ちている。
 石神さんは、学んでいる占星術を紹介。生まれた時の空に惑星がどう配置されているかによって、いろいろ読み解けるのだという。アセンダントと太陽と月は、外観の雰囲気を作るものなんだそう。
 竹澤さんの本には、池辺氏と三枝氏のコメント(1999年)。三枝氏は、ポーランドで、なぜ日本人なのに邦楽器の作曲をしないのかと問われ、それから邦楽曲ばかりつくっていたが、邦楽と洋楽は平行線だ、水と油だ!と苦悩の叫びを紹介!
 JACSHA鶴見による本日の竹野甚句「川尽くし」もまた、ウィットが飛んでいる(川だけにウェッティ)。江戸、大阪、京都などの大河川が出てきたかと思えば、川は皮にスライド。我らが四股1000メンバーの大切な楽器も登場。甚句が記された草書に、一文字読み解けないものがあると、みんなで読み解く。「る」は、「ま」や他の文字にも似ていると、竹澤さんが学生時代のテキストを引っ張り出して教えてくれた。
 JACSHA世話人里村の本からは、「土の中から世界が出てきた」と考えた昔の人は、土をだんだんと盛り上げてとうとう建築を作った、という話。泥の建築を作るのと宗教に対する感覚は近かった。四股も登場。土俵築にも「築」の文字がある、土俵も建築と考えると、またちょっと違って見える。

 こうした四股談義の後に、夏至の夜四股を開催する上でのネット環境についても議論。リモートで暮れゆく夕焼けを味わいながら、同じ土俵を体感するために、重心の安定も大切だが、通信の安定も大切だ。

四股ノオト
6/16 四股ノオト

6/14 四股1000 四十八日目 脇と蛇

 今後の発展を鑑みて、これまでのタイトル「四股トレ1000」に変わって、本日より「四股1000」とする。

 15名参加。東京、神奈川、茨城、京都、大阪、福岡、沖縄より参加。PR動画の追加撮影をしてから稽古開始。本日のカウントは、「軸とハラを鍛えれば必ず強くなる!」(高岡英夫著)より下丹田、「日本反文化の伝統」(上林澄雄著)、「ワニのオーケストラ入門」(ドナルド・エリオット著)よりホルン、トロンボーン、チューバ、トライアングル、さいたまトリエンナーレ2016千秋楽での一ノ矢さんとJACSHAの相撲聞芸術フォーラムより、直感を磨くための日々の稽古、「グランドツアー 地底モノ」(藤森照信著)より、蛇と蛙と縄文、日本語の数、琉球古典音楽「かぎやで風節」、「映像と文化」(日高優著)、松井茂短歌作品集(ひーふーみー、踏み踏みソング)、のカウントで1000回。

 バーチャル背景ではなく、リアルに自然豊かな沖縄の公園(ガジュマル舞台)から参加した映像作家の山城さんは、屋外で踏んでみると、体内の暗闇、洞窟である内側と外側を行ったり来たりする感じがしたという。山稽古の楽しみはこれなのかもしれない。沖縄はマラソン、ロードバイク、ゴルフなどの屋外でのスポーツ大会が人気で、全国からたくさんの人が集まるが、自然の美しさを眺めながら、内側と外側の行ったり来たりを楽しみ励むのであろう。

 ダンサーの砂連尾さんが参加する日は、どんな発見をされるのかが楽しみになる。今日は「脇」だ。踏んで、キュンッ、踏んで、キュンッと、一歩踏むごとに脇にキュンと響き、脇の下()からポンッポンッと何か出てくる感じがして、脇に対する執着が湧いたとのこと。JACSHA世話人里村が朗読した「グランドツアー」の、地中から蛇や蛙や精霊がモコモコ出て来る感じと似ている。なので、脇の下から蛇がニューンと出てきたり、釈迦が生まれる様をイメージしてみんなで体を動かしてみた。脇への意識は相撲にとって重要なので、必然の感覚なのだなと納得する。注連縄(横綱の綱)にみる蛇の神聖さと、鍛えられた体感が一致してくる。四股ってすごい。

四股ノオト
6/14 四股ノオト

6/13 四股トレ1000 四十七日目 テッポウトロンボーン

 14+1名参加(過去最多数)。東京、神奈川、茨城、京都、大阪、福岡、沖縄より参加。本日のカウントは、日本語の数、北海道の行政区、宮城道雄三味線練習曲21(合奏)、は、「ワニのオーケストラ入門」(ドナルド・エリオット著)よりホルン、トロンボーン、さいたまトリエンナーレ2016千秋楽での一ノ矢さんとJACSHAの相撲聞芸術フォーラム、ポーランド語の数、緊急奨励金申請者居住地、竹野相撲甚句、「ベルリン1933(クラウス・コルドン著)、松井茂短歌作品集(ひーふーみー、踏み踏みソング)、のカウントで1000回。参加が10名に満たない時は、ラスト100回を全員でカウントし、カオスの音響が続いてバラバラっと1000に到達するが、今日のように10名以上参加のときは、ラスト100回分はそれまでと同じくソロカウントになる。本日のラストは、歌手の松平敬さんが「松井茂短歌集」の数字を、ひーふーみーで歌った。たびたび歌ってくださるのだが、ラストに聞くといつもに増して大変にメディテイティブな100歩を踏むことができた。箏奏者の竹澤さんと澤村さんが、宮城道雄三味線練習曲を口三味線で合奏してくださって(本手と替え手)、オンライン上でずれるものの、とても面白かった。各カウントはソロ演奏だが、合奏になったり、ヨイショ!など、一人ひとりが思い思いの合いの手や声援を入れながら、10名前後によるアンサンブルで約30分の楽曲となる。もはや日替わりの総合芸術、四股踏みオペラと言えるだろう。

 文化生態観察家の大澤さんが初参加。「すごい面白い!有意義だった!流行らせよう!」と、大分楽しんで1000回踏んでくださった。もうちょっと激しいものと思っていたが、続けるのにちょうど良いとのこと。ご自身のカウントでは、だんだんゆっくりになっていったが、修正はせず身を任せていったという。

 コントラバス奏者の四戸さんが朗読する「ワニのオーケストラ入門」を聞いて、JACSHA樅山は、トロンボーンは常にテッポウをしていると気づいた。これから「テッポウトロンボーン」という作品が生まれるだろう。右手だけだとバランスが悪いので、二本同時に演奏するなど、左手用も考える必要がある。ほとんどの楽器演奏は、体の左右がアンバランスである。箏奏者の竹澤さんは、四股トレ1000をきっかけに、難曲である神田佳子作曲「箏と打楽器のための練習曲No.1」に挑戦している。この作品の演奏法にある、伝統的には使わない左手の親指を鍛えているそうだが、これをヒントに「おっつけ箏曲」が出来るかもしれない。

 来週日曜日、21日の夏至の夜に四股トレ1000をやる計画。全国各地日の入りのズレを共有しながら夜の四股を経験する試み(夏至股夜四股/げしこよしこ)。近くの人は誘い合って野外からの中継もあるかもしれない。

四股ノオト
6/13 四股ノオト

6/12 四股トレ1000 四十六日目 オートマティズム

 9名参加。東京、神奈川、茨城、京都、兵庫より参加。腰割り前のトレーニングからスタート。本日のカウントは、元素、宮城道雄三味線練習曲20番、竹野相撲甚句、夏の甲子園大会実況、日本語の数、さいたまトリエンナーレ2016千秋楽での一ノ矢さんとJACSHAの相撲聞芸術フォーラム、建築史家・藤森照信氏が建築に見る重さや重心について、全員のカウントで1000回。腰割り前のトレーニングは、なんとバレエ用語で置き換えられる。踵上げ下げはルルベ、太腿外旋運動はドゥミプリエ、腰割りはセカンドポジション。教えてくれたのは、「四股に憑かれたジャレオ」というダジャレを思いついてしまう程に四股トレにハマっている、ダンサーの砂連尾さん。大正時代までと、昭和以降の力士の四股スタイルは変わった。軸足ではない足は曲げたまま上げて、下腹、内側への意識が強かったのに対し、現在は見栄えも考慮して、足を真っ直ぐに伸ばして上げる、つま先の延長上の外側を意識したスタイルが多い。これは西洋の影響もあったのではないかとも考えられる。四股トレ1000は、合気武術の佐川幸義氏(明治35〜平成10)が一日千回踏んでいた佐川流四股が発端になっているが、多い時で一日一万回踏んだという。「バレエをしたいなら四股を踏め」として、学校の授業にも四股を取り入れ、一日少なくとも千回、多くて四千回に達するという、まさに四股尽くしの日々を送る砂連尾さんは、近いうちに一日一万回に挑戦したいという。メニューは、午前三千、昼四〜五千、夜二千。千回は約30分なので、一日合計5時間踏むこととなる。深層筋を鍛えて、二枚腰ダンスを目指しているそうだ。

 久しぶりで2回目の参加となった、城崎国際アートセンターの吉田さんは、オートマティズムが芽生えたそうだ。初回は頭を使うことが多かったが、今日は、56700回あたりから自動的に体が動くようになり、心地良かったという。四股ハイの境地である。JACSHA野村が連日朗読している相撲聞フォーラムは、皮膚感覚の話題。強い力士は、一瞬触っただけで相手のことが分かる。ミリ単位、0コンマ何秒のズレで負けてしまうというから大事な感覚だ。これを研ぎ澄ませるために毎日の四股テッポウすり足の基本稽古を続けるのだろう。今日は四股トレ後のボーッと放心状態になる四股メディテーションを久々にじっくり味わったが、皮膚や細胞に四股が充満し、夏の暑い空気に体の境界線が溶けていくようであった。

四股ノオト
6/12 四股ノオト