「竹野相撲甚句ファンファーレゲエの大冒険」について 鶴見幸代

2022年7月23日(土)14:00〜神戸文化ホールでの、こどもコンサート『海は ひろいな おおきいな』まであと1週間!ということで宣伝をかねて、合唱とオーケストラのための新曲「竹野相撲甚句ファンファーレゲエの大冒険」についても少し解説します。長いタイトルなので、この後は「大冒険」と省略します。

コンサートは0歳から入れます🎶
概要は神戸新聞に掲載された記事をご覧ください。
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202207/0015465629.shtml

竹野相撲甚句は、兵庫県の日本海側、豊岡市竹野町に伝わる相撲甚句です。お相撲さんが歌う大相撲タイプの相撲甚句とは、メロディも歌詞も共通点がたくさんあるものの、はっきりとした違いもあります。船乗りが伝えた、港町の奉納相撲で発展してきたことによる、竹野相撲甚句独特の歌と振り付けになっています。

初めての出会いは、2018年。JACSHAが城崎国際アートセンター(KIAC)にレジデンスをしていた時です。元竹野相撲甚句保存会の與田さんから教わりました。與田さんが、地元の竹野小学校の金管バトンクラブで竹野相撲甚句を演奏できるようにしたい!と熱くお話しくださったので、そのサウンドを想定してJACSHA3名の鍵盤ハーモニカで演奏したのが元祖「竹野相撲甚句ファンファーレゲエ」です。

そして2年後、2020年のKIACレジデンスでは、竹野小学校の金管バトンクラブのみなさんとのリモートワークショップで、竹野相撲甚句の一部を演奏することができるようになりました。コロナの影響がなければ、金管バトンクラブのみんなと対面で交流し、野外で行列をしながら演奏することを思い描いていましたが叶わなかったため、滞在制作成果発表コンサートで上演した「オペラ双葉山〜竹野の段」では、「竹野相撲甚句ファンファーレゲエ」を再びJACSHA3名の鍵盤ハーモニカで演奏しました。「大冒険」には、この子供たちと作って演奏した箇所、そして夢が叶って行列をしているところも出てきます。

今回は、同じ兵庫県内の文化であることや、「竹野相撲甚句ファンファーレゲエ」は、夏や海というファミリーコンサートのテーマにも相応しいということでご依頼いただき、「大冒険」として書き下ろしました。

竹野相撲甚句との出会ってから、自分の作品に頻出するようになりました。「毛弓取り甚句」(ヴァイオリン、ピアノ)、「南後船」(オーケストラ)、「初代高砂浦五郎・其ノ二」(三絃弾き語り)などありますが、「大冒険」は、竹野相撲甚句の純度が100%に近い音楽です。竹野相撲甚句は19曲残されていて、そこから「大冒険」では「揃うたや」「鶴亀」「竹野のや」「鳴りもの尽くし」「当所の相撲」の5つが出てきます。

今月上旬にプレミア上映されました、竹野相撲甚句がたっぷり登場する映画「霧の音」では、私が地元の人と竹野相撲甚句を一緒に楽しそうに歌ってるシーンがあるように、自分でも結構歌えるようになっていたものの、作曲するにあたり、今年に入ってから、竹野の民宿「大栄」に1週間近くセルフレジデンス(今っぽく言えばワーケーション)をし、さらに與田さんから竹野相撲甚句を細かく教わったり、竹野の自然をじっくり脳裏に焼き付け体験し、曲の基本を作るところから始まりました。

ワーケーション中に驚いたのが、昨年オーケストラのために作曲した「南後船」の竹野相撲甚句のシーンで想像していた風景を見つけたことでした。大栄のすぐ近くにありました。朝靄の中に船がたくさん泊まる港。「大冒険」は、竹野川に降る朝の雨と波、山にかかる霧、曇った空を舞うトンビやと川ウ海ウ達、沖から船が次々とやってきて、海の入り口の岩に「揃う」ところから始まります。そして、竹野を出発し、海なのか川なのか空なのか、色々な波に乗って冒険しながら神戸に流れ込んできます。

こどもコンサート『海は ひろいな おおきいな』

2022年7月23日(土)13:15開場 14:00開演
神戸文化ホール 大ホール
全席指定 一般:2,000円 小学生以下:500円

こどもコンサート『海は ひろいな おおきいな』

出演
【指揮】石﨑真弥奈
【打楽器】安永早絵子
【管弦楽】神戸市室内管弦楽団
【合唱】神戸市混声合唱団

【プログラム】
♪ 鶴見幸代:竹野相撲甚句ファンファーレゲエの大冒険
♪ シューマン:交響曲 第3番「ライン」より 第1楽章
♪ 中村滋延:四季のラプソディ より「春から夏へ」
♪ 海にまつわる童謡・唱歌 より
ほか

こんなコンサートは初めて!
この公演は、普段のクラシックコンサートに比べリラックスした環境で、
年齢や障害を越えて誰でも音楽を楽しむことができるよう、以下の工夫をします。
●客席で動いたり音が出てもいい
●公演途中も入退場ができ休憩ができる
●照明が完全に暗くならない
●0歳入場可
●点字プログラムあり

[主催](公財)神戸市民文化振興財団
[助成](一財)地域創造
[協力]城崎国際アートセンター(豊岡市)、日本相撲聞芸術作曲家協議会(JACSHA)

 

猫崎半島から見た竹野
夕暮れの竹野川
弁天様から見た港
トンビ
朝雨と霧の竹野川

竹野相撲甚句ファンファーレゲエ体験ワークショップ&〜竹野の風土を映す〜映画『霧の音』上映会報告 2022年7月3日

2022年度のJACSHAは、城崎国際アートセンター(KIAC)の主催プログラム「とよおか芸術考現学博物館プロジェクト(仮)」として、『「竹野相撲甚句ファンファーレゲエ」をいっしょに演奏しよう!』おんがくワークショップを通年で実施します。

7月3日には第一回目のワークショップを、兵庫県豊岡市竹野町の「ふれあい会館」で行いました。子供から大人まで、11名の参加者とともに、竹野相撲甚句の体の動き、歌を体験したあと、メロディ、手拍子のリズム、足のステップのリズムの3パートに分かれて、鍵盤ハーモニカ、ハンドベル、ウッドブロック、小鼓、鈴、鳥の笛などの楽器を使ってパート練習をし、最後に合奏をしました。竹野相撲甚句は本来、声と手拍子と足のステップによる音楽ですが、いろいろな楽器で、いろいろな音色による、独特な竹野相撲甚句の音楽となりました。ふれあい会館の館長さんで、元竹野相撲甚句保存会でもある與田政則さんが、竹野相撲甚句を歌ってくださいましたが、この独特な楽器のアンサンブルにも参加してくださいました。今後のスケジュールは、8月、10月、12月、来年2月か3月の予定です。
(写真提供:城崎国際アートセンター、JACSHA)

ワークショップチラシ
JACSHAオリジナル相撲甚句体操の仕上げは塵手水
竹野相撲甚句のステップと手拍子の練習
手拍子リズムのパート練習
ステップリズムのパート練習
メロディのパート練習

 

竹野相撲甚句について放送されたテレビ番組を見る
竹野相撲甚句の楽譜
竹野相撲甚句体操の楽譜と歌詞

ワークショップの後は、同じ会場で、波田野州平監督映画『霧の音』のプレミア上映会が開催されました。KIACが、KIACと地元とアーティストの関わりを描くものとして企画し、波田野州平監督の作品として作られた映画です。

2020年のJACSHAレジデンスの15日間を撮影したものなので、JACSHAがたっぷり登場します。上映後の、アフタートークでは、映画にも登場する、元竹野相撲甚句保存会の濱邊準之助さんが竹野相撲甚句を歌ってくださいました。プレミア上映は、映画の主な舞台となった竹野で行われましたが、今後はいろいろなところで上映されるといいなと思います。(写真提供:JACSHA)

波田野監督と、KIAC橋本さんのアフタートーク

予告編をご覧いただけます: