7/5 四股1000 六十九日目 ハープ

 10名参加。東京、神奈川、茨城、群馬、長野、京都、大阪、福岡、沖縄より参加。本日のカウントは、日本語の数字(モデラート、鈴付、アレグレット)、四股瞑想甚句(鶴見幸代作)、オランダ語の数字、「アリになった数学者」(森田真生著)、ニーチェ「ツァラトゥストラ」(手塚富雄訳)、シェーンベルク「月に憑かれたピエロ」より「月に酔い」「コロンビーナ」、「ワニのオーケストラ入門」(ドナルド・エリオット著)より、ハープとチェンバロ、全員のカウントで1000回。

 石神さんは、奈良にある天河神社の鈴を鳴らしながらカウントした。宇宙と交信しているような清らかな気分で四股を踏む。鈴は五十鈴(いすず)と呼ばれ、3つの鈴が三角形で結ばれている。解説を見てみると、『「生魂」(いくむすび)、「足魂」(たるむすび)、「玉留魂」(たまずめむすび)、という「肉体・精神・魂」或いは「天・地・人」なる三位一体の状態をあらわしています。』と書かれている。足の魂にあたるのが精神というのが興味深い。玉留の魂というのは腰や丹田かもしれない。相撲では”心技体“や、”心気体“の三位一体の調和が求められる。特に、”心気体“を一致させるのことが相撲力になるという。天河神社の神様は芸事の神様だというから、四股を踏む芸道にも通ずるであろう。

 JACSHA鶴見はオリジナルの「四股瞑想甚句」でカウントした。四股を踏みながら聞く本の朗読や、四股や腰割りや体の解説で得られる、内容と体がリンクするような不思議な感覚は誘導瞑想なのではないかと思い、久々に誘導瞑想をしながらそのテキストを四股踏み用にアレンジしたという。力が抜けて気持ちよくなり、四股肯定感(6/27四股1000六十一日目四股肯定感参照)に繋がる甚句であった。

 昨日に続けて二回目の参加となったピアニストの平良さんは、昨日は緊張していたが、今日は体の変化を感じながら開放できたという。50本の質の高いノックよりも千本ノック、のように、数をこなすことは大事なのだと、二回目にして四股1000の意義を感じてくれて嬉しい。

 評論家の松平あかねさんは遂に「月に憑かれたピエロ」を歌ってくださった。早いテンポの四股にも慣れてきたので愉快だ。「四股に憑かれたジャレオ」がますます楽しみになる。歌手の松平敬さんは、暑苦しいツァラトストラのキャラを迫力満点で演じてくれた。贅沢な四股ンサートを堪能した。

 コントラバス奏者の四戸さんがいつも読んでくれる「ワニのオーケストラ入門」。ハープのグリッサンドのところで、相撲の前捌きの動きを想起し、すり足をしながら前捌きするイメージで踏んでみた。相手の突っ張りを回避するための、両腕両手が交互に下から上へ向かう旋回運動の連続だ。思えばハープは、両足ともにペダルを使い、両腕も使うから、腰や丹田がしっかりして椅子に下りていないと演奏できないだろう。肩甲骨も柔らかいはずだ。少しだけ演奏したことがあるが、強い張力の太い弦をはじくので、全身を使わないと一音でもほとんど音が出ず、かなり大変だなと思った経験がある。力んでもいけない。一見優雅な楽器演奏に見えるが、ハープ奏者は脱力のスペシャリストなのかもしれない。

 日曜日の夕方の稽古。文化生態観察家の大澤さんは、素敵なコミュニティスペース「そろそろ旅に出ますか。」から、箏奏者の竹澤さんは群馬と長野のパーキングエリアから、石神さんと松平あかねさんは、お出かけ帰りのドレスでよそいきの四股、打楽器奏者の神田さんは最後の1分だけ、JACSHA樅山は愛知の出張から帰宅して家から。いつもと違って、オンラインならではの全国四股旅気分。今夜は6/21の夏至股夜四股から十五日目の満月。薄曇りの合間から月が見えてきたので、さっきもやったけど、月見しながらひと四股踏みますか。の気分。

7/4 四股1000 六十八日目 思い出せない

 9名参加。東京、茨城、京都、沖縄より参加。本日のカウントは、日本語の数字、大きな古時計(諫早弁)、松井茂短歌作品集(和歌詠みスタイル)630日読売新聞夕刊、宮城道雄三味線練習曲「かすみたつ」(二上り)、オランダ語の数字、こいなゆんた、わらべ唄・コーラス付(高畑勲作詞作曲)、木村朝之助さんとJACSHAのトーク「岩槻と相撲と音楽2017」、津軽平野、全員のカウントで1000回。

 占星術を勉強している石神さんが、今日は30度以内くらいに惑星が全部見える日と教えてくれた。昼間だったり曇って見えなかったりしても、遠くの宇宙空間で寄り添い合っている、惑星達を想像しながら四股を踏むのはなんて素敵だろう。

 ピアニストの平良さんが初参加。JACSHA鶴見と沖縄で音楽ワークショップをされているので、たびたび一緒に四股を踏んでいるそうだが、1000回は初めて。自分でカウントして声を出すと運動量が多くなり熱くなるが、1000回はちょうどいいとのこと。オランダ語でカウントしてくれた。数のカウントはこれまで、日本語、インドネシア語、ポーランド語、ドイツ語、フランス語、猫語、犬語、蛙語があったが、オランダ語は初めて。外国語数字での四股踏みは結構楽しく、オランダ語もなかなかいい。全員カウントで聞こえたポーランド語で、新しい言葉を聞くと反応してワクワクしたと平良さんが言っていたが、たしかに新しい出会いの楽しさと喜びを、数字と四股で味わうことができる。

 連日JACSHA野村が音読している、行司の木村朝之助さんとJACSHAとのトークは驚きがいっぱいだ。土俵上の一番が終わると、リセットして次の一番に臨むそうだ(次の一番で混ざらないように、取組んだ力士の名前を忘れるようにする)。お相撲さんは一番取り終えればハケられるが、行司さんはデハケがないまま土俵上に残り、連続して裁くことになるので、ずっと緊張感が続くなか、行司さんならではの土俵上でのリラックスポイントがあるのではないかと思い知りたかったので、今日はそれに近いエピソードが聞けた。勝ち名乗りを上げた直後くらいだろうか、呼出しさんの次の力士の呼び上げの頃だろうか。また、裁いた相撲の内容は直後は思い出せず、後からだんだんと思い出すそうである。取り組み後のインタビューで、内容は覚えていません、というお相撲さんはよく見るが、行司さんもなのだ。力士達と息を合わせ、相当の集中力と緊張感が続くのだろう。

7/3 四股1000 六十七日目 高音と重心

 8名参加。東京、茨城、愛知、京都より参加。セカンドポジションでドゥミプリエ(腰割り)、ファーストポジションでドゥミプリエ2回、グランプリエ1回(蹲踞)、ルルベから開始。本日のカウントは、日本語の数字(黙想、片目、無心・精霊付、力強)、地菅攪、サティ「ソクラテス」第三楽章、うたいきかせ般若心経(伊藤比呂美現代語訳、作曲:藤枝守)、木村朝之助さんとJACSHAのトーク「岩槻と相撲と音楽2017」、「説経節」(伊藤比呂美現代語訳)、全員のカウントで1000回。

 ダンサーの砂連尾さんは、手を合わせて気持ちを落ち着かせてからの黙想(両目をつぶる)、片目を隠す、という普段の視覚情報と違う状態での四股踏みをリードしてくれた。片目は思ったよりおかしな感覚になる。両目より体の傾きを感じたり、体が偏っているのを気付いたり、重心が変わったりする。メンバーそれぞれの左右の見え方、視力、明るさの違いがあることを知る。双葉山は右目が見えなかったというが、常人ではない強さの理由の一つにこのこともあるのかもしれない。

 評論家の松平あかねさんは、高音のソプラノで「ソクラテス」を歌ってカウントした。重心を下げる四股踏みをしながら、高音で歌い続けるのはどういう感覚か尋ねると、高層の建築の土台が深いように、高音の発声ではより重心を下げるのだそうだ。四股と高音は相性がいいようだ。低音は声をたくさん出さず、垂らす程度に歌うという。発声するときの体内の筒のイメージのことも教えてくれた。これは西洋クラシック音楽独特の発声法で、習得するのはとても難しい。その他の伝統音楽や民謡では筒のイメージはしない。松平さんいわく『周波数を集めた歌い方』となる。西洋音楽は教会などの建築物と共鳴して声を出すことが違いの要因の一つであるそうだ。相撲の呼出しさんはどうかと言うと、呼出し邦夫さんの場合は、西洋スタイルの筒発声と、ホーミーのような周波数を集めた発声のどちらも合わせ持った独特の声のため、ファンからは邦オペラとも言われることがある。呼出し利樹之丞さんは典型的な周波数を集めた発声といえるだろう。

 シェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」から、「四股に憑かれたジャレオ」というダジャレが思い付くほど四股にハマっている砂連尾さんの四股風の踊りで、隠れキリシタンのクレドと六段のように、松平あかねさんの歌と、竹澤さんの箏などの和楽器にアレンジした「月に憑かれたピエロ」をやってみたら面白そうと盛り上がる。指揮者がいないと演奏が難しいので、四股ンダクターも必須だ。隠れ四股たんのレパートリーが増えていく。

四股ノオト
7/3 四股ノオト

初代高砂浦五郎の地歌<相撲もの>をつくる 2020年8月9日(日)

7月12日から始まる「すみゆめの七夕」で、JACSHA野村が、作曲ワークショップ、新曲発表とトーク、コンサートを行います。中でもJACSHAとしての目玉は、8月9日「初代高砂浦五郎~高砂浦五郎を賜るの段」新曲初演!高砂部屋マネージャーで元・一ノ矢の松田哲博氏による原案!演奏は、竹澤悦子さんです。一ノ矢さんのトークもあるそうです!楽しみですね。

初代高砂浦五郎の地歌<相撲もの>をつくる

日 時
8月9日(日)14:00~15:45

ト ー ク
松田哲博(元・一ノ矢/高砂部屋マネージャー) × 野村誠
「初代高砂浦五郎伝」執筆のこと、そこから生まれる地歌のこと、じっくりと語り合います。

浪曲地歌
「初代高砂浦五郎~高砂浦五郎を賜るの段」※新作初演
原作:松田哲博、作曲:野村誠、地歌三味線:竹澤悦子
※すみだリバーサイドホールで公開収録を行い、後日オンライン配信します。

詳細は、下記ページより:

https://sumiyume.jp/event/tanabata2020/

7/2 四股1000 六十六日目 リラックス

 10名参加。東京、神奈川、茨城、愛知、京都、福岡より参加。ルルベ、ドゥミプリエ、壁の股割り、腰割りから開始。本日のカウントは、狂歌(松平あかね作)、グレゴリオ聖歌「ディエスイレ」、色と形と音の瞑想(ルドルフ・シュタイナー著)、木村朝之助さんとJACSHAのトーク「岩槻と相撲と音楽2017」、「説経節」(伊藤比呂美現代語訳)、サティ「ヴェクサシオン」、日本語の数字(遅重、モデラート)、箏曲「六段」より二段目、全員のカウント(犬、猫、象、など)1000回。

 JACSHA野村が昨日より音読している、高砂部屋の十両格行司木村朝之助さんとのトークは、土俵上の裁きについて驚くことがたくさんある。軍配を上げるとき、考えている時間はなく、直感と反射神経で勝手に体が動くので、軍配を差し違えたことも直後に分かるんだという。面白い感覚だ。力士は稽古をするが、行司の稽古やリハはないという。呼出しさんからも伺ったことがあるが、巡業や本場所での出番が本番でもあり練習でもある。やるときはいつでも本番であるという緊張感から磨かれる直感力もあるのだろう。毎日の四股1000はリラックスをするのが重要で、楽器の演奏でもリラックスと脱力の効果を実感するため、毎日が本番の行司さんや呼出しさんの土俵上でのリラックス体感についても知りたいところだ。

 文化生態観察家の大澤さんは、100回踏む間、足元から頭まで徐々に水が上がってくるようなイメージをしながら踏むことがあるという。水ではなく油だったらどうかなと、液体の種類も変える。また、体を傾けるときに、体内の水の傾きを意識してみるという。感想戦でだらんだらんと揺れながら緩やかに実践してみたが、大変気持ちいい。究極のリラックスで、脱力した時の体の重みが手にとって分かるような感じ。

 肩こりに悩む打楽器奏者の神田さんは、両手で輪ゴムを軽く繰り返し伸び縮みさせる運動を教えてくれた。インナーマッスルに効きそうでこれも気持ちいい。体に無理がなく、インナーマッスルの動きで思い出す楽器にテルミンがある。肩甲骨と腕の柔らかな動きを空中でする事でフワフワと音を変化させる演奏だ。松平あかねさん、松平敬さんが、動きと声で上手にデモンストレーションしてくれたが、これも気持ちよさそうだ。四股の周りにテルミンを置いたらどんな音楽になるだろう。

四股ノオト
7/2 四股ノオト

7/1 四股1000 六十五日目 裸

 10名参加。東京、茨城、愛知、京都、大阪、福岡より参加。ルルベ、ドゥミプリエ、壁の股割り、腰割りから開始。本日のカウントは、カエル語(脱力系)、元素(軽い方から)、木村朝之助さんとJACSHAのトーク「岩槻と相撲と音楽2017」、「説経節」(伊藤比呂美現代語訳)、「アリになった数学者」(森田真生著)、宮城道雄三味線練習曲「笛の音」(二上り)、ジミヘン「パープルヘイズ」、狂歌(松平あかね作)、「母韻」(詩・藤井貞和)、全員のカウントで1000回。

 JACSHA樅山は、出張中のホテルから、カメラをオフにして裸で参加した。そのことによって「肉」としての体に気づいたという。パンツを履いているときは、パンツを、その肉と世界を隔てる膜のように感じ、パンツを脱いだら、ホテルの部屋自体を膜のように感じたそうだ。お相撲さんはマワシをつけずに真っ裸で四股を踏むことはあるのだろうか。また、JACSHA樅山は、いつもの自宅とは違う床で踏んでみることで、四股が直接骨に響くのを感じたという。四股の一歩一歩を振り下ろす際に、スネの骨に垂直に刺激を与えることがとても大事だと、一ノ矢さんもおっしゃっている。四股を踏む床(土)の素材や状況によって、足裏や骨、脇など、体のどこを感じるかが変わってくる。

 JACSHA鶴見のカウントは、鍵盤ハーモニカで「パープルヘイズ」。ロックで四股を踏んだのは初めてかもしれない。オフビートで体が真っ直ぐになるタイミングがあって踏みやすかった、怒りで踏みこみ、やさぐれて脱力した、という感想があった。踏むたびに幸せを感じる四股もあれば(6/27四股1000六十一日目四股肯定感参照)、やさぐれた四股もあるのである。ヤンキーは、股関節と足首が柔らかくないとヤンキー座りは出来ないとダンサーの佐久間さんが指摘してくれた。鶴見は音楽的な理由で選曲したのでなく、煙と四股の夢を見て「パープルヘイズ」の邦題「紫のけむり」を思い出したからだという。夢では海にいたというのも、ジミヘンが「パープルヘイズ」を作ったときと共通しているという。となれば、次は「スモーク&スモー・オンザウォーター」(水上の音楽)だ!というアイデアに。宇和島への郷土愛が強い松平敬さんのお祖母さんは、紫色の日本髪で戒名に紫雲が入っているという。

マリノオト
7/1 マリノオト