7/26 四股1000 九十日目 七月場所中日八日目 祈りの四股

 6名参加。東京、神奈川、茨城、京都より参加。七月場所中日八日目幕下上位〜十両の取組を観戦しながら実施。本日のカウントは、日本語の数字、取組実況、茶音頭(六下り)、ポーランド語の数字、仲順流り、全員のカウントで1000回。

 地歌奏者の竹澤さんは、土俵上の木村朝之助さんは、歌舞伎役者のようで、役に入っている(行司の役)ように見えるという。確かにそうかもしれない。表情もたたずまいも、体の動きも声も、普段とは全然違い、大変迫力があるので、見ている方もグイグイと惹き込まれていく。でもこれは役であったり、演じているのとは違う気もする。行司さんは行司そのものであるが故の迫力に圧倒される気がする。行司の練習はしないと朝之助さんがおっしゃっていたのは、行司そのものだからかもしれない。人間は人間の練習をしないように。

 竹澤さんは、昨日紹介してくださった、六下りの三味線楽曲「茶音頭」を演奏くださった。野点(のだて)や、お点前の時に演奏する音楽らしいが、これまた相撲に合う。JACSHA鶴見は、沖縄の三線音楽は相撲に合うのかどうかの実験として、エイサー音楽「仲順流り」を演奏した。土俵はちょうど、沖縄ゆかりの二人の力士、千代ノ皇に美ノ海の対戦であった。幟が立っているようなお祭り感があって、嬉しくワクワクすると竹澤さんが感想をおっしゃってくれた。もっといろいろな音楽と相撲の相性を実験してみたい。

 評論家の松平あかねさんは、最近はよく足が上がっているなと見ていたが、股関節が動いてきてリンパの詰まりが解消されてきたかもという。バレエをやっていた子供の頃、足首と膝だけを無理に外側に開いていたので痛めてしまったことがあるらしいのだが、6年前に回向院にて開催した、一ノ矢師匠を講師にお呼びしたワークショップ「レッツ相撲ミュージック‼︎」で四股トレをしたときに、股関節から開くことを教わったことで、かつては無理をしていたのだと気付いたという。師匠にもお伝えしなければならない。

 四股1000を始めて90日目。1000回は全然無理がないのが染み付いたので、そろそろ回数を増やしたくなってきた。ダンサーの砂連尾さんは、今月来月中には110000回に挑戦したいと言っていた。1000回で約30分するから、10000回だと5時間。ぶっ続けは大変だろうから、何千回かずつ分けたとしたら、一日中四股を踏み続けることになる。松平さんはそれはまるで修道院のようだという。祈りの聖歌を一日中歌い続けるように四股を踏む。晩鐘の鐘の代わりに拍子木を打つ。四股は祈りなのである。

四股ノオト
7/26 四股ノオト

7/25 四股1000 八十九日目 七月場所七日目 相撲に合う音楽2

 7名参加。東京、茨城、京都、福岡より参加。七月場所七日目序二段の取組を観戦しながら実施。本日のカウントは、取組実況、宮城道雄小曲集「みよしのは」、葉っぱのフレディ、松井茂短歌作品集(和歌詠みスタイル)、日本語の数字、買い物東西土俵入り、「記憶する体」(伊藤亜紗著)、調弦実況、全員のカウント(取組即興演奏)1000回。

 歌手の松平敬さんが久しぶりに「松井茂短歌作品集」を和歌詠みスタイルでカウント。これも相撲を見ながら聴くといい相性である。

 昨日に引き続き、三味線と相撲の相性について。地歌奏者の竹澤さんが演奏する楽曲でなく、調弦を変えるだけでも、相撲との相性が引き立つ。口三味線や三味線でカウントを続けてきた宮城道雄小曲集第一巻は遂に今日で終了。三味線には、本調子、二上がり(二揚げ)、三下り(三下げ、一二揚げ)の他にもいろいろな調弦があり、JACSHA鶴見からは、日本の三味線とは違う、沖縄の三線独特の一揚げ(長二度ー完全五度)、竹澤さんは六下り(完全四度ー長二度)を紹介してくれた。沖縄の三線と相撲との相性はどうかと、鶴見が一揚げの楽曲を少し演奏してみたが、JACSHA野村は、音楽を聴きながら相撲を見ると、相撲の忙しいテンポに乗らず、音楽のテンポの中で相撲を見るので、相撲がゆっくりに見えると言う。ますますいろいろな音楽で相撲を見たくなってくる。ラスト100回では、取組を見ながら即興演奏を試してみたが、これもまだまだ展開出来そうだ。

7/24 四股1000 八十八日目 七月場所六日目 相撲に合う音楽

 10名参加。東京、茨城、京都、大阪、福岡より参加。七月場所六日目序二段の取組を観戦しながら実施。イチロースタイル腰割り、2nd1stポジションで、ドゥミプリエ、ルルベ、グランプリエから開始。本日のカウントは、日本語の数字、取組実況、723日読売新聞朝刊文化欄「エンニオ・モリコーネ氏を悼む 映画を超えたメロディー」(大友良英)、「サイレンス」(ジョン・ケージ著、柿沼敏江訳)、葉っぱのフレディ、宮城道雄小曲集「みよしのは」、全員のカウントで1000回。

 相撲を見て四股を踏みながら、いろいろなカウント、お話を聞くのも面白くなってきた。地歌奏者の竹澤さんが三味線を鳴らした瞬間、相撲との相性に心が揺らいだ。JACSHA鶴見はすぐに酒が飲みたくなったという。相撲と三味線が合う感じ、これはどういうことなのか。鶴見はひょっとして文化的な先入観のせいもあるのかも、と言っていたが、ダンサーの砂連尾さんは、バレエなどの西洋音楽と体の動きが「合う」感覚というのは、音楽と動きが同期する方向に向かうが、相撲のテンポと即興的な足運びと三味線は、主と従の関係がなく、何事も起こっていないような感じで、余白や隙間を想起させ、ゆっくりと引き込まれるような感じ、という。abemaの相撲中継の幕内取組では、プロレス的な演出でBGMも流れるが、三味線が合うというのもいいねぇ、と文化生態観察家の大澤さんは言う。

 昨年12月にJACSHA野村と鶴見が、日本センチュリー交響楽団の企画「ハイドン大學」で、相撲を通してハイドンの交響曲を分析するということを行った。鶴見は楽曲のスコアを見たり音楽を聞くと、相撲の技や特定の力士、特定の取組が思い浮かんだので、ある楽章と千代大海や寺尾の突っ張りと合うと紹介された、音楽とビデオを同時に再生して見ると「合っている感じ」がしてとても面白かったが、確かにあれも同期の楽しさだ。敢えて音楽の自然な流れを分断して作られたような楽章と、炎鵬ー豊山戦の不思議な立ち合いと間合いのマッチングは、同期の楽しさと余白への引き込まれ感の両方があったとも言える。

 各地の格闘技では、例えばタイのムエタイや、ブラジルのカポエイラは競技中に音楽が演奏される。大相撲の取組中に音楽は演奏されない。相撲の音楽といえば相撲甚句があるが、取組中に歌われることはなく、独立した余興として行われる。「相撲節会」(すまいのせちえ)があった平安時代の頃は、雅楽が演奏されていたのかもしれない。鶴見は、かつて相撲で演奏されていたかもしれない音楽を想像して曲を作ったことがあるそうだが(「弦築」)、相撲の楽しみ方は様々あっていいのだから、四股1000をしながらいろいろ試してみたい。ラスト100回の全員カウントの時に、相撲を見ながら即興演奏してみようということになる。

7/22 四股1000 八十六日目 七月場所四日目 立ち合い前の所作

 8名参加。東京、茨城、京都、沖縄より参加。七月場所四日目序二段の取組を観戦しながら実施。本日のカウントは、日本語の数字、ピアノ四股、宮城道雄小曲集「みよしのは」、木村朝之助さんとJACSHAのトーク「岩槻と相撲と音楽2017」、「説経節」(伊藤比呂美現代語訳)、「サイレンス」(ジョン・ケージ著、柿沼敏江訳)、取組実況、全員のカウントで1000回。

 相撲中継を見ながら初参加となった、歌手の松平敬さんは、取組前の力士の気分になったという。花道で、23番後に取組を控えて落ち着かない感じ。面白い感想だ。ステージ袖での本番前の時とリンクするのだろうか。取組前の力士の気分はあまり想像したことがないので、次に実践してみたいと思う。

 JACSHA野村が毎日音読している、木村朝之助さんとのトークは、名残惜しくも遂に終了。201710月のトークが実現できたのは、翌年2月に開催された朝赤龍引退断髪式の準備のために、朝之助さんが秋巡業をお休みしていた貴重なタイミングであったのだ。断髪式にはJACSHAも四股1000メンバーも駆けつけた。トークの中で、行司は人と人の間に入る仕事で、力士の結婚式などのイベントの制作業務も請け負うとおっしゃっていたが、断髪式当日も朝之助さんは館内でお忙しそうにお仕事をされていらっしゃった。高砂部屋フル稼働のこの日はファンにとってはたまらなく、引退相撲は花相撲ともいうくらいなので、いつもの大相撲観戦に比べて一層賑やかに、華やかに、音楽的な声援を送って楽しんだことも懐かしい。こんな風にして相撲を楽しめる日が今後来るのだろうかと、今場所の様子を思うと心配になる。

 1000回踏んだあと、力士が四股名を呼び上げられてからの一連の所作を、中継を見ながら真似してみた。土俵に上がり二字口で黙礼、赤房白房の下で四股、二字口で塵手水、仕切り線で上段の構え、蹲踞、仕切り、蹲踞、立ち合い、といった流れで、立ち合いまでにやることがいっぱいあって大変だ。関取以上はこれに塩が入って何度も仕切る。相撲を取るまでにエネルギーを消耗してしまうのではないかと思うが、この所作によって心身が一つになり、力士と行司の息が合って行くのだろう。疲れが先行せず気持ちが落ち着いて行くほどに、この動きの流れに慣れてみたい。

四股ノオト
7/22 四股ノオト

7/21 四股1000 八十五日目 七月場所三日目 装束

 9名参加。東京、神奈川、茨城、京都より参加。七月場所三日目序二段の取組を観戦しながら実施。立ち合い前の一連の所作を真似してから開始。本日のカウントは、日本語の数字(取組実況、声援、普通、テンポチェンジ)、ピアノ四股、木村朝之助さんとJACSHAのトーク「岩槻と相撲と音楽2017」、「説経節」(伊藤比呂美現代語訳)、近況の語り(バランスディスク、コンタクトレンズ)、六甲おろし、全員のカウントで1000回。

 初日に引き続き大相撲観戦四股1000。今日は序二段の取組を見ながら、カウントを続けて行った。あまりカウントを入れずに、行司さんや呼出しさんの声に耳を傾けたり、声援を送ったり、コメントを入れたりして、最後の100回は新屋敷ー朝乃土佐戦を実況しながら終了。JACSHA野村は、行司さん達の装束の丈が短いので、腰割れ具合や姿勢がよく見える、軍配を返す所作をしながら四股を踏んだり、力士の四股を見ながら腰を下ろしてみたり、取組中のテッポウを真似したりなど、土俵上の動きをコピーしながら四股を続けたそうだ。野村は相撲の経験があるので、今後は取組実況にも期待。JACSHA鶴見は、四股1000を始める前と比べて、力士の重心や、取組中の優劣、この後どうしたいのか、と言った力士の動作が分かるようになってきた気がするそうだ。

 野村が毎日音読している、木村朝之助さんとのトークは、装束の話題。オリジナリティあふれるポップなコノミヤ(スーパー)のマークの装束。十両昇進の時に、コノミヤの会長さんが作ってくださったそうだが、会長さんが宣伝のつもりでマークを使ってくれとなどとは一切言わず、会長さんのご希望は白地に金か銀のもので、いいものを作って欲しい、紋は任せるということだったので、コノミヤのマークを使わせて下さいと、朝之助さんからご提案されたそうだ。夏物は、この白地の金と緑の二着あるそうだ。毎日の装束に注目するのも楽しみである。

四股ノオト
7/21 四股ノオト

7/19 四股1000 八十三日目 七月場所初日 コロナ対策舞台

 7名参加。東京、茨城、京都、大阪、福岡、沖縄より参加。本日は大相撲七月場所初日。四股1000が始まったのは、コロナ禍のステイホーム中心真っ只中の428日。五月場所は中止になったので、本場所開催中の四股1000は初めてとなる。日曜日は17:00開始のため、幕内後半戦を画面共有しながら進行した。まずは後半戦最初の取組、炎鵬ー竜電戦を見てから、阿炎ー北勝富士戦の仕切りの間に四股を踏み、立ち合い直前に四股をやめて相撲を見る。勝負が着いたら四股を再開する、といった要領。仕切りの時間中に大体100回踏めるのだが、ちょっと足らなくなったり、足りそうだけど立ち合いのドキドキを楽しみたいので、早めにカウントを止めて相撲に集中するなどして、四股を踏みながら相撲鑑賞も楽しみ、遠藤ー鶴竜戦の仕切りの時間中に1000回終了。相撲鑑賞をしながら四股1000回の充実感はよく分からないが、無理なくできるのは間違えない。火〜土曜日は、午前中の四股1000なので、序二段〜三段目の相撲を見ながらやる予定。

 大相撲はコロナ感染防止対策が入念に行われて開催されている。最近各地で再開されてきている音楽のコンサートもだ。四股1000メンバーから、コンサートがどのように行われているのか、観客サイド、演奏家サイドから感想や情報交換をした。舞台上で演奏家達ははソーシャルディスタンスを保ち、これまでよりひとり一人が離れて配置されている。それによりこれまでとは違って聞こえる響きが、計算されたものなのか、そうじゃないのかが観客からは気になったそうだ。演奏家は、一音一音はしっかり聞こえるが、一体感がない、演奏しやすいが熱くならない、という感覚だという。音楽を演奏する時の距離感はとても大事だと思うので、演奏側も聴く側も、これまでとは違った感受性を得ていくのだろうと思う。

 大相撲の客席では、飛沫感染防止のため声援は送れないので、何があっても拍手で応答をしている。今日見ただけでも、その様子はまるでコンサート。随所随所でいろいろな種類の拍手が沸き起こる。この雰囲気もいいなぁと思う一方で、コンサートもそもそもは、拍手だけでなく、お客さん達は思い思いの声援を送りながら賑やかに楽しんでいたのに、今回のコロナのように、何かをきっかけに拍手しかしなくなった、という抑圧された歴史があったのでは?とも思える。なので逆に今場所の相撲のように、せめていろいろなバリエーションの拍手で随所随所で応答するようなコンサートがあってもいいのかな、などと、鑑賞の仕方も多方面に影響をもたらす場所でもある。しかし、実は拍手も結構危険、という実験結果も聞いたことがあるので、拍手さえも禁止にならなければいいけど。

7/18 四股1000 八十二日目 手刀、禹歩

 7名参加。東京、茨城、京都、福岡より参加。背伸び、セカンドポジションでドゥミプリエ(腰割り)、ルルベ、ファーストポジションでドゥミプリエ、ルルベ、グランプリエ(蹲踞)から開始。本日のカウントは、日本語の数字(ノーマル、手刀)、祝詞・方屋開口、「世界遺産時代の村の踊り」(星野紘著)717日読売新聞朝刊スポーツ欄「新大関に対する期待」、木村朝之助さんとJACSHAのトーク「岩槻と相撲と音楽2017」、「説経節」(伊藤比呂美現代語訳)、宮城道雄三味線練習曲「寝覚め」、全員のカウントで1000回。

 ダンサーの砂連尾さんは、合気道の手刀(しゅとう)を入れた四股をリードしてくれた。片手で、または両手を合わせて、腕を真っ直ぐに振り下げる。四股のように、自然に腕の重みでおちるのがポイント。腕で振らない。下腹に効くという。合気道経験のある評論家の松平あかねさんは、腹が定まらないと腕が止まらない(コントロールできない)という。JACSHA鶴見は、おそらく腕で振っていたせいで、両手の手刀が相当堪えたらしいが、体の中心線を具体的に感じたという。また、この手刀は、岩槻の子ども古式土俵入りの「アコノ」の所作、ねってい相撲の拳を突き上げる時の所作と類似しているので驚いた。相撲にも手刀(てがたな)を切って懸賞金を受け取る所作があるし、手刀はこれからのキーワードの一つだ。

 文化生態観察家の大澤さんが読んでくれた「世界遺産時代の村の踊り」では、反閇(へんばい)の足運びと、禹歩(うほ)を知った。禹歩は、左右左、右左右、左右左の九歩を踏む。一歩ずつ、臨(てん)・兵(ひょう)・闘(とう)・者(しゃ)・皆(うい)・陣(じん)・烈(きつ)・在(ざい)・前(ぜん)、と唱えるそうである。一歩ごとに文字や意味が当てられているとしたら、四股の一歩の味わい方もかなり変わるだろう。九歩というのも、先の手刀に続き、ねってい相撲と大きな共通点である。反閇や禹歩に関連する、奥三河の花祭りの、神事やエネルギッシュに足踏みをする舞などの、一連の儀式を記録動画で見てみると、相撲も舞なのだな、もしくは、舞も相撲なのだな、と自然に思えてくる。

 本日は大相撲七月場所の土俵祭り。JACSHA鶴見は土俵祭りで奏上される祝詞の後半と、方屋開口(かたやかいこう)でカウントした。四股1000稽古が始まる時間のちょうど前に、土俵祭りがライブ配信されていたので鑑賞したが、土俵周りで儀式に立ち会う親方衆や行司さん達は、マスクをつけてソーシャルディスタンス。三月場所と同じくお神酒のふるまいはなかった。クライマックスである、2組が連れ立って演奏する、触れ太鼓土俵三周は、よく響く館内の四方八方からリズムがこだまするので、スティーブ・ライヒの「ピアノ・フェイズ」が幾重にも重なるような、複雑で立体的なリズムで飽和し、自分の前に来れば2組が重なって聞こえる気がする「触れ太鼓フェイズ」は、生で聞いても中継で見ても圧倒的なフィナーレ。最後の最後は清廉な拍子木の音で終了する。

 というわけで、明日からいよいよ大相撲七月場所から始まる。松平あかねさんは、読売新聞の「新大関に対する期待」を読んでくれた。新大関の場所でいい成績を残す記録は少ないそうだが、大勝ちして早くも次の地位を目指して頑張ってほしい。楽しみな十五日間が始まる。四股1000も相撲を見ながら実施する予定なので、進行の仕方がガラッと変わるだろう。楽しみな十五日間だ。